Youtubeチャンネルはこちら!

【5分対策⑤】土地の価値が上がると勘違いして購入|95条の錯誤を図解で解説【法律】

前回は、94条の虚偽表示について学びました。今回は、95条の錯誤についてみていきます。

錯誤とは…勘違いを含んだ意思表示。原則取り消し可能

民法95は、錯誤のある意思表示についての規定です。「錯誤のある意思表示」とはすなわち、何かしらの勘違いを含んだ意思表示です。正確に言うと、意思表示の段階のどこかで、表示した内容に対応した意思が欠け、かつ、その欠けていることの認識をしていない場合を言います。

錯誤に基づいて意思表示を行ってしまった場合、その意思表示を取り消すことができます。勘違いをしてしまったかわいそうな表意者の真意をくみ取ってあげる、意思主義に基づくものです。

但し、「その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要である」必要があるとされています。「取引上の社会通念に照らして」は、民法でよく出てくる文言ですが、「民法上の取引を行う人々の常識からして」というような意味です。

そして、その錯誤が「重要である」といえるためには、その錯誤をしていなければ意思表示をすることもなかっただろう、と考えられる部分について錯誤に陥っている必要があります。例えば、百万円の物を百円だと思ってその物を買う意思表示をしたときに、「百万円だと分かっていれば買わなかった」と言える場合、錯誤が重要であると言えます。

錯誤の種類…動機・内容・表示の錯誤。意思表示の段階によって区別

錯誤は、意思表示のどの段階での勘違いなのかにより、3つの種類に分かれます。

まず、①動機から内心的効果意思に移る段階での錯誤である、動機の錯誤です。これについては後で詳しく説明します。

そして、②、内心的効果意思から表示意思に移る段階での錯誤である、内容の錯誤です。例えば、「ドルと円が同じ価値だ」という思い違いをしているAさんが、Bさんに土地を売ってくれと言われて、「一千万円でなら売ろうかな」という効果意思を持ちます。しかし、ドルと円が同じ価値だと思っているために、「『一千万ドルで売る』と言おう」という表示意思を持ってしまい、そのまま表示行為にでてしまう、というような場合です。現実にはあり得ないと言っても過言ではありません。

最後に、③、表示意思から表示行為に移る段階での錯誤、表示の錯誤です。これは、書き間違いや言い間違いなどです。

②と③の錯誤は、「意思表示に対応する意思を欠く錯誤」として、95条1項1号に規定されています。②の場合、表示意思に対応する効果意思が欠けていて、③の場合、表示行為に対応する表示意思がないという訳です。

動機の錯誤…動機の認識が誤っているために間違った内心的効果意思が生じる

動機の錯誤は、「表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」をいい、95条1項2号に規定されています。「法律行為の基礎とした事情」は「動機」のことを指します。意思表示の前提となる動機についての認識が誤っていたために、間違った効果意思が生じてしまうわけです。

例えば、実際にはそんな事実はないのに、新幹線が通るという噂を信じて、その周囲の土地の価値が上がると思い、土地を買う意思表示をする、といった場合です。

この錯誤があった場合には、その事情が法律行為の基礎となっていることが相手方に表示されていた時に限り、意思表示の取消ができます。先ほどの例だと、「新幹線が通って土地の価値が上がるのなら土地を買うよ」というような話がされていれば、表示されているということになります。なおかつ、最初に出てきたように「錯誤が重要である」必要もあるため、二つの要件を満たすことで取消が可能になります。

重大な過失…表意者の過失。それでも取り消しが可能な例外も。

もっとも、表意者に重大な過失がある場合には、原則取消しができなくなります。例えば、ある土地の価額が一億円と表示されていたのに、千円だと思って買う意思表示をする場合です。そのような場合には、さすがに意思表示のときに気付いておくべきだと考えられるためです。

例外として、一、相手方が、表意者に錯誤があることを知っていたか、知らないことに重大な過失があった場合。そして、二、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていた場合、の2つの場合には、表意者に重大な過失があっても取り消すことができます。

また錯誤の場合にも、95条4項に、善意でかつ過失がない第三者に取消しを対抗できないとする第三者保護規定が置かれています。これについては、次の96条の詐欺で詳しく解説します。

まとめ & スズトリYouTube版

今回の動画では、95条の錯誤についてみてきました。次は、96条の詐欺と強迫についてみていきます。YouTube版もあるのでどうぞ↓