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【5分対策#13】売り主の担保責任|債権債務関係と契約責任を解説【図解・法律解説】

今回は、売り主の担保責任の規定について、改正前と現行法の違いをみていきます。

担保責任

まずは、平成29年改正前の規定についてみていきます。そもそも担保責任とはなんなのでしょうか。

例えば、AとBが、Aの所有する甲土地の売買契約を締結し、甲土地の引き渡しを受けたとします。このときBは、農業を営みたいと思っており、甲土地が農業用であることを理由に売買契約を締結しました。しかし実際には、甲土地は数十年にわたり放置されており、とてもすぐ農業を始められる状態ではありませんでした。このようなときに、BはAに対し、売買の目的物である甲土地に瑕疵があることを理由に、損害賠償請求や契約の解除を求めます。これが担保責任です。

以前見た債務不履行責任は、債務の履行を行う段階で発生するものですが、担保責任は債務の履行が終わった後の段階で問題となるものと言うことができます。

瑕疵担保責任

担保責任は、大きく分けて、①物の瑕疵に関する責任と、②権利の瑕疵に関する責任に分かれます。

①を特に瑕疵担保責任と言います。これは、改正前民法の570条に規定されていたもので、目的物に隠れた瑕疵(きず)があった際、買主がそれを知らなければ、契約の解除並びに損害賠償請求ができるとするものです。隠れた瑕疵があることを知らずに目的物を受け取った買主の保護を図る規定となります。

②の権利に関する瑕疵は、改正前民法の561条から569条に規定されていました。これについては、(a)目的物の所有権の全部又は一部が他人に属する場合(560条~564条)と、(b)目的物に、担保権などの他人の権利が付着している場合(566条、567条)の2つに分けられます。

これらの規定により、瑕疵のある目的物を受け取った買主は、契約の解除や損害賠償などをすることができるとされていました。

特定物と種類物

瑕疵担保責任は、特定物について引き渡す契約でのみ発生するとされていました。

民法における契約の目的物は、それがどのような性質をもつかにより、特定物と種類物とに分かれます。特定物は、その物の個性に着目して引き渡しの対象とされる物であり、例としては不動産や美術品などです。それに対して種類物は、同じ種類の物のうち一定数量の引き渡しが目的とされる物です。つまり、「これじゃなきゃだめ」というのが特定物で、「その種類であればどれでもいいよ」というのが種類物という訳です。

種類物についてさらに一定の制限をかける場合、制限種類物となります。

例えば、パソコンを購入する場合、パソコンであればどれでもいいとすれば種類物、「このメーカーの」パソコンがいいとすれば制限種類物、あるメーカーのパソコンのうち、この型でこの機能が入った、「この」パソコンがいい、とすれば特定物にあたる訳です。

種類物であれば、同じ種類のものがいくらでもあるため、債務者が用意した物に瑕疵があっても、債権者は債務不履行があったとして、代わりの物を引き渡すことを請求すれば事足ります。そのため、種類物については瑕疵担保責任は発生しないわけです。

法定責任説と特定物ドグマ

問題となるのは、このような責任が発生する理由です。特に、物の瑕疵についての責任である瑕疵担保責任において争いがあります。

改正前民法下での通説は、法定責任説と呼ばれる立場に立っていました。これは瑕疵担保責任が特定物についてのみ特別に認められた責任であるとする見解です。特定物を引き渡す契約である場合、代わりは存在しないため、債務者はそれを引き渡すほかありません。

そのため特定物に瑕疵があっても、それを引き渡せば債務不履行とはならないとされ、瑕疵のない物を引き渡す義務は生じない、とされていました。これを特定物ドグマと言います。

しかし、瑕疵がある物をそうと知らずに引き受けた債権者に何ら保障が及ばないとすると、当事者の公平に失します。そこで民法が、瑕疵担保責任の規定を設けた、と説明するわけです。

現行法の規定

しかし近年においては、このような考え方は採用されておらず、代わりに契約責任説という考え方が有力となっています。

この立場は、債務不履行責任は債務の履行の段階で発生する一時的な契約責任、担保責任はその後に発生する二次的な契約責任であると説明する立場です。そのため、この立場では特定物と種類物で扱いを分けるようなことをせず、一律に処理をしていくことになります。

この考え方をうけ、現行法では562条にて買主の追完請求を定め、引き渡し後に、目的物の種類や数量に関して、契約の内容に適合しないことが明らかとなった時は、履行の追完を請求できることとされました。同時に563条で、瑕疵がある分代金の減額の請求ができることになりました。

そして損害賠償や契約の解除については、債務不履行の場合の規定により処理することにされました(564条、415条、541条)。

これらの請求は、瑕疵が明らかとなったときから一年以内にしなければならないとされています(566条)。
あくまでも二次的な責任であるため、主張期間に制限が設けられたわけです。

まとめ & スズトリYouTube版

今回は、担保責任の規定についてみてきました。YouTube版もあるのでどうぞ↓