Youtubeチャンネルはこちら!

【5分対策⑥】詐欺・強迫とは?|意思表示の取消と無効の違い【法律解説・図解】

今回は、96条の詐欺と強迫についてです。

詐欺・強迫とは…意思表示の効力についての規定と瑕疵ある意思表示

96条は、詐欺や強迫に基づく意思表示の効力についての規定です。つまり、騙されて意思表示をしてしまった場合や、無理やり意思表示をさせられた場合についての規定だということです。

注意してほしいのは、民法においては「強迫」と表記しますが、刑法においては「脅迫」と表記するという点です。刑法における脅迫は、単に脅すことを言いますが、民法における強迫は、脅すことで自由な意思表示を妨げることを言います。

詐欺や強迫による意思表示は、瑕疵ある意思表示とよばれます。これは、表示された内容に対応する効果意思はあるものの、その意思の形成の段階で他人の行為が挟まり、正しい判断ができなくなってしてしまった意思表示を言います。

詐欺や強迫による意思表示は、96条1項により取り消すことができます。

詐欺の成立に必要な4つの要件

詐欺による意思表示が成立するためには、次のような要件が必要とされています。


①相手方を騙して錯誤に陥れようとする故意と、錯誤によって意思表示をさせようとする故意。
②欺罔行為。
③表意者が欺罔行為により錯誤に陥り、その錯誤により詐欺者が欲した意思表示をすること。
④詐欺が違法性のあるものであること、の4つです。

まず①は、二重の故意と呼ばれるものです。単に騙そうという故意だけでなく、騙したことにより意思表示をさせようという故意も必要となります。


②は、欺罔行為、つまり「騙す」行為が必要となります。具体的には、真実でない事実を、あたかも事実であるかのように表示することです。


③は、騙された人が錯誤に陥り、その錯誤に基づいて、騙された人が、騙した側の欲する通りの意思表示をすることです。


そして④は、文字通り違法性のある詐欺行為のことです。例えば、洗剤を売る人が、「脅威の洗浄力」などと言ってお客さんを集めるのは、単なる売り文句であるため、たとえ事実でなかったとしても違法性はありません。

この①から④の流れがなければ、詐欺による意思表示は成立しません。

第三者による詐欺…事情を知っていれば取り消せる

詐欺は、原則AさんがBさんに詐欺を受けて、Bさんに対して意思表示をする場合を予定していますが、AさんがCさんから詐欺を受けて、Bさんに意思表示する場合もあります。第三者による詐欺、という類型です。

第三者により詐欺が行われた場合には、意思表示の相手方、つまり先ほどの例のBさんが、「AさんがCさんに騙された」という事情を知っているか、知ることができたときに限り取り消すことができます。

Aさんが騙されたと言う事情を知らない場合には、Bさんからすれば正常な意思表示であるため、表示通りの効果を発生させるべきだからです。

強迫の場合…詐欺による意思表示と同じ

強迫による意思表示が成立する要件は、詐欺による意思表示の場合と同じです。すなわち、①、二重の故意、②、強迫行為、③、強迫により相手方が畏怖し、意思表示をすること、④、強迫が違法性のあること、の4つです。どれかが一つでもかけていれば、強迫による意思表示は成立しません。

第三者の保護…強迫に限り対抗が可能

96条にも、第三者を保護する規定が存在します。96条3項は、「詐欺による意思表示の取消は、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない」と規定します。あくまで、「詐欺による」意思表示であるため、強迫による意思表示の場合には、どのような場合でも第三者に対抗できることになります。


なぜ詐欺による意思表示のみに第三者の保護が認められるかというと、表意者本人に「騙された」という帰責性が存在するためです。強迫は、誰かに脅されて無理やりさせられた意思表示であるため、取消を認めてあげないと表意者がかわいそうであると考えられているわけです。

もっとも、この詐欺の第三者保護に関しては様々な問題があります。

「無効」と「取消」

ここで「取消」と「無効」の違いについて説明します。

これまで、93条の心裡留保94条の虚偽表示95条の錯誤96条の詐欺・強迫についてみてきましたが、93・94条では「無効」という言葉を、95・96条では「取消」という言葉を使っていました。「無効」も「取消」も、ともに法律効果が発生することを妨げる役割をしますが、実は2つには違いがあります。

「無効」は、誤りの程度が重大であるため、「そもそも成立していない」というイメージで、「取消」は、誤りの程度がさほどではないため、「『取消をしたい』と言えば無効になる」というイメージでいいと思います。そのため、取消ができる場合、実際に取消がなされるまで有効だと扱われるわけです。

そして「無効」は、そもそも成立していないため、だれもが主張することができますが、「取消」はその意思表示をした本人でなければ主張できません。似たような用語でも、このような違いがある訳です。

まとめ & スズトリYouTube版

今回は、詐欺と強迫による意思表示の成立について扱いました。次は、詐欺における第三者の問題についてみていきます。YouTube版もあるのでどうぞ↓