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【5分刑法#05】窃盗・強盗|事後強盗|刑法をわかりやすく解説【図解】

今回は、財産犯である窃盗罪や強盗罪にまつわる話です。


窃盗罪と強盗罪

窃盗罪は、235条に規定されています。「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」という内容です。

「窃取」とは、他人の意思に反して財物を奪うことを言います。被害者が占有している物を、その人が気づかないうちに奪うのが窃盗となる訳です。

そして強盗罪は、刑法236条1項に規定されています。「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した者は、強盗の罪とし、5年以上の有期懲役に処する」という内容です。

ここでは「強取」という表現が使われていますが、これは意思に反して無理やり奪うことを言います。

窃盗も強盗も、意思に反して奪うのは同じですが、強盗は「暴行又は脅迫」を用いて、被害者の「物を渡したくない」という意思を押さえつけて奪う罪であるわけです。そのため、強盗罪が成立するためには、強盗の被害者の反抗や抵抗を抑圧する程度の暴行・脅迫を行っている必要があるとされています。

2項強盗罪

236条には2項の規定も存在し、「財産上不法の利益」を強取する場合も、強盗罪となるとしています。

これを2項強盗罪、又は強盗利得罪と言います。財産上不法の利益を得る例としては、レジで精算中に代金の支払いを免れようと、店員を殴って逃げる場合です。窃盗罪においては、処罰の対象となる行為は、財物を得る行為のみであり、財産上不法の利益を得る行為(利益窃盗)は含まれません。

例えば、飲食店で食事をした後に代金の支払いを免れようと、店員が接客している隙を見て逃げたとします。確かにこの場合でも「支払いを免れる」という利益を「窃取した」と言えます。しかし、「金を払う意思がないのに料理を注文した」という点で別途詐欺罪が成立するため、罰する必要がないと考えられたわけです。

事後強盗

このように、窃盗と強盗は似ているようで別の罪だと言うことがわかると思います。しかし、窃盗行為をした後であっても、強盗が成立する場合があります。

それが、事後強盗です。事後強盗は238条に規定されていて、「窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる」とあります。

例えば、コンビニの商品を万引きした窃盗犯が、追いかけてきた店員を殴って追跡を逃れたような場合が事後強盗にあたります。窃盗の「事後」に「強盗」行為をするため、事後強盗と呼ぶわけです。事後強盗が成立した場合、通常の強盗と同じく236条により処罰されます。

窃盗の機会

事後強盗が成立するためには、まずは窃盗罪を犯していることが必要です。

そして、盗んだ財物を取り返されるのを防いだり、追いかけてきた店員などにより逮捕されるのを免れたり、窃盗の証拠を隠滅したりするために、暴行・脅迫をする必要があります。また、暴行・脅迫行為は、「窃盗の機会」に行われている必要があります。

例えば、窃盗を行った1か月後に、被害者でもない人物に対して暴行したような場合にも、事後強盗罪が成立してしまうと、急に罪が重くなってしまうためです。

そのため、暴行・脅迫行為が、①窃盗行為と時間的に接着した時点に行われているか(時間的接着性)。②窃盗行為と場所的に接着した地点で行われているか(場所的接着性)。③窃盗行為と関連した行為であるか、という3点を考慮して、窃盗の機会に行われた暴行・脅迫であるかを判断することになります。

強盗の機会

窃盗の機会と似た用語として、強盗の機会というものもあります。


これは、強盗犯が被害者や警察官などを負傷させたり、死亡させたりした場合に成立する、強盗致死傷罪(240条)における用語です。強盗の現場では、強盗行為の後にも、人が負傷・死亡するような結果が発生することが多いものです。

そのため、強盗の手段としてなされる暴行・脅迫から死亡結果が生じた場合のみに強盗致死傷罪が成立するとしてしまうと、処罰できる範囲が狭くなってしまう恐れがあります。そこで、「強盗の機会」に行われた行為、すなわち強盗行為と時間的・場所的に接着していてかつ、強盗行為と関連した行為についても、強盗致死傷罪が成立する、としたわけです。

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今回は、窃盗罪や強盗罪についてみてきました。YouTube版もあるのでどうぞ↓