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【法律解説】多めにお釣りを貰ったら、詐欺罪!?【わかりやすく】

こんにちは、ミノです。皆さんは、詐欺行為を働いたことや、詐欺の片棒を担いだことはありますか。当然私はありません。

しかし、実は私たちの身近にある行為が、詐欺などの犯罪にあたることがあります。今回はそんな身近な犯罪行為について、紹介していきたいと思います。

皆さんは、こんな経験があるでしょうか。900円の買い物をするとき、レジで千円札を出したら、店員が一万円札と間違えて、9100円が返ってきてしまいました。皆さんはこんなとき、ラッキーと思って持ち帰ってしまいますか。それとも、ちゃんと返しますか。実は、詐欺には釣銭詐欺、という類型があります。この釣銭詐欺についてみていく前に、大元の詐欺罪についてみていきたいと思います。

そもそも詐欺とは…刑法246条。成立には4つの要素。

詐欺罪は、刑法246条に規定があります。『人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する』という内容です。オレオレ詐欺など、被害者を騙してお金を支払わせる行為が典型例です。「人を欺いて財物を交付させた」、という部分が、詐欺という犯罪行為の在り方について規定した部分ですが、より詳しく言うと、詐欺罪が成立するためには、次の4つの要素を満たす必要があります。

①人を欺く欺罔行為、により②被害者を錯誤に陥らせ、③被害者に財物、つまり「物」の交付をさせ、④欺罔行為者に財物が移転する、という4つです。

①欺罔行為とは、そのまま「騙す」行為です。その騙す行為があって初めて、②被害者が錯誤に陥る、つまり騙されるわけです。③そして、「財物の交付」は、被害者自らの意思で行われる必要があります。被害者の意思に関係なく財物を奪うと、窃盗罪や強盗罪など、別の罪に関する問題となります。④最後に財物が行為者の手にわたって、詐欺罪が成立するわけです。

それでは、先ほどの例にこの規定を当てはめて見ましょう。千円札を出した側をAさん、店員をBさんとします。

この場合、①の欺罔行為は、「お釣りが多いことを告げなかったこと」になります。まずAさんは、お釣りを受け取った、その場で金額が多いことに気付いたわけですが、あくまで気付いたのは受けとった後です。受け取った後であるため、上の条文における「財物」はすでに、欺罔行為者である、Aさんの手にわたっているわけです。その後に欺罔行為があるため、欺罔行為から財物の移転が生じると言う流れがないため、詐欺は成立しません。

釣銭詐欺が成立する場合…指摘する義務を果たさないと欺罔行為に該当

では、どのような場合に、釣銭詐欺が成立するのでしょうか。少し例を変えて考えてみます。

Aさんが千円札を出して、お釣りを受け取る前に釣銭が多いことに気付いたとしましょう。この場合、お釣りが多いことに気付いた時点で、「お釣りが多いことを指摘する義務」がAさんに発生し、「その義務を果たさなかったこと」が詐欺罪における欺罔行為に該当します。その欺罔行為に基づいて、Bさんが錯誤に陥り、財物の交付をし、財物が移転していることになるため、詐欺罪が成立するわけです。

利益に関する詐欺…財物以外の場合。2項詐欺罪

ここまで説明してきたのは、刑法246条1項に規定されている、「財物」に関する詐欺です。実は、詐欺罪は、財物以外が対象となった場合にも成立します。246条2項の規定です。

これを2項詐欺罪といい、その罪の対象は「財産上不法の利益」となっています。財物ではなく「利益」であるため、パソコン・スマホなどの「具体的な物」は2項詐欺罪の対象にはなりません。どのようなものが対象になるかというと、借金などの権利です。つまり、欺罔行為により「もう借金返さなくていいよ」と言わせることなどが2項詐欺罪の対象になる訳です。

具体的な例で言うと、お釣りを持ち帰ったあと、店から電話がかかってきて「お釣り多くなかったですか」と聞かれ、「そんなことなかったですよ」などとごまかして、返還するべき釣銭について、それ以上追及させないようにする行為をした場合、2項詐欺が成立する可能性があります。

また、これらの場合に詐欺罪が成立しなくても、刑法254条の遺失物等横領罪が成立することがあります。


つまり、お釣りが多いことに気付いていなかったとしても、お釣りをもらって持って帰った時点で何らかの罪に問われる恐れがあるという訳です。余計なトラブルに巻き込まれないようにするためにも、お釣りが多いことに気付いた時点で、お店に連絡して返すことをお勧めします。

まとめ & スズトリYouTube版

今回は釣銭詐欺について紹介しました。何の気なしにした行為でも、実は犯罪になってしまう、というケースは意外とたくさんあります。ここで紹介したことが、皆さんの生活に役立てば幸いです。