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【図解】事件の時効をわかりやすく解説。犯人は?逮捕は?【法律解説マンガ】

 こんにちは、ミノです。皆さんは裁判を受けたことがありますか。私は当然ありません。呼び出しに応じなければ、裁判を受ける必要もありませんからね。

罪を犯した人が、そのまま逃げおおせる例は、それほど多くありません。日本の警察は優秀、とよく言いますが、実際そうだと思います。しかし、ときたま「時効」が成立したために、罪がなくなったという例を聞くと思います。そこで今回は、この時効についてみていきたいと思います。

公訴時効とは…死刑にあたるものを除く

時効という概念は、犯罪行為について規定する刑法、それから市民の財産関係について規定する民法、両方に存在します。

これから見ていく刑法での時効は、公訴時効と呼ばれています。公訴時効とは、一定の年数が経過することで、その罪に関する事件を裁判にかけることができなくなることを言います。この、時効が成立するのに必要な一定の年数が経過することを、時効が完成する、と言います。公訴時効については、刑事訴訟法250条に規定されています。まずはこの規定を詳しく見ていきましょう。

まず、250条1項は、人を死亡させた罪の公訴時効に関する規定です。大きなポイントは、250条1項本文の「(死刑に当たるものを除く。)」という規定です。この規定があることにより、殺人罪、強盗致死罪、強盗・強制性交等致死罪などの、最高刑が死刑とされ、凶悪犯と言われる悪性の強い罪の時効が、撤廃されることになりました。これにより、これらの罪については時効が完成しない、つまり何年経っても公訴の提起が可能になったという訳です。

そして最高刑が死刑より下の罪については、その重さに従って、時効が完成する年数が少なくなってきます。罪が軽いということは、それだけその犯罪が行われる数が多く、少し時間が経つだけで、その犯罪の証拠が見つけづらくなってしまうため、もはや刑罰を下す必要性に乏しいと考えられているためです。

また、250条2項には、同様に人を死亡させない罪の公訴時効が規定されています。
興味のある方はそちらも見てみてください。

これらの規定は、平成22年の改正より、新しく生まれた規定となります。この改正により、事件後何年経っても起訴できることになり、被害者遺族にとっては泣き寝入りせずに済むことになるわけです。

問題点…公訴時効により冤罪防止効果があった。自白強制など新たな問題も

だからと言って、この改正に問題がなかったかというと、そうともいいきれません。改正が行われる前までは、公訴時効があることにより、えん罪を防ぐことにつながっていると言われていました。

起訴までに時間がかかりすぎてしまうと、被告人の事件に関する記憶も薄れ、場合によってはそれ以上取り調べを受けなくて済むように、自白を強制させられたりする事態にもなりかねません。そのため、公訴時効によりある程度時間的な制限を設けることで、えん罪を防止していたわけです。

また、公訴時効を廃止・延長したことにより、それ以前に起きた事件については、改正前と改正後のどちらの時効を適用するのかも問題となりました。判例では、改正のときに時効が完成していないものについても、改正後の時効を適用するとしています。しかしそうすると、改正しなければ時効を迎えていたのに、改正されたことにより公訴時効が完成せず、「時効が完成するからもう起訴されない」という期待を裏切ることになるのではないかと争われたわけです。

この点について判例では、行為時点に不処罰だったものを処罰したり、行為時の法律より重く処罰したりするわけではないため、遡及処罰の禁止について規定した憲法39条に違反するものではないとしました。

遡及処罰の禁止とは、ある行為が行われた当時においては適法だった行為を、その後に新しくできた法律で犯罪として処罰することを禁止する原則です。そうしなければ、後出しじゃんけんのように、後から法律を作って、どのような行為でも違法とできてしまうためです。あくまで起訴できるかできないかの話であるため、この原則とは関係ない、と裁判所は考えたわけです。このような観点からの批判があり、公訴時効の改正については大きな議論となったようです。

まとめ & スズトリYouTube版

今回は、公訴時効の問題について見ていきました。平成22年の改正により、一部の凶悪犯罪については公訴時効が撤廃され、何年経っても訴訟を提起することができることになりました。しかし、必ずしもいい点ばかりではなかった、ということがわかってもらえれば幸いです。