このシリーズでは、主に高校生向けに、高校・大学で学ぶ「憲法」について、解説していきます。今回は、そもそも憲法とは何か、また日本国憲法における基本原理についてみていきます。
目次
憲法とは
憲法とは、国家という「統治団体」の存在を基礎付ける「基本法」としての役割を果たすものです。
近代以前においては、国王が一国を統治し、国王の独断で国の運営に関わる全てが決められてしまい、国民の権利は蔑ろにされていました。16世紀から17世紀にかけてヨーロッパで支配的になっていた絶対王政がその最たる例となります。
長きにわたって続いた絶対王政ですが、国民の権利を重視する考え方が発展し、市民革命がおこることにより、終わりを迎えることになります。革命の際主張されたのが、「立憲主義」という考え方です。
これは、国の統治の基本となる憲法をつくることで、国王などの専断的な権力を制限し、広く国民の権利を保障するというものです。その憲法の中には、国民の権利や義務に関する規定や、国の統治の方法などの規定を置きます。そのため憲法は、「国を統治するときにこれだけは守ってほしい」という最低限のルールを定めたものと言うことができます。
そして、立憲主義の考え方が発展して生まれたのが「法の支配」という考え方で、権力を法で拘束することにより、国民の権利自由を擁護することを目的とする考え方を言います。立憲主義と似たような考え方ですが、法の支配の内容には、国民の権利を制約する法律を作る場合、その内容は必ず国民自身が決定することが含まれています。そのため、民主主義や後述の国民主権の原理と結合する考え方となっているわけです。
日本国憲法の基本原理
日本は第二次世界大戦での敗戦と同時に、民主主義を採用し、天皇による支配体制は終わりを迎えました。
そのため、敗戦後の1947年に制定された日本国憲法においては、民主主義を前提とした原理が採用されています。
それが、①国民主権、②基本的人権の尊重、③平和主義、の3つです。これらの原理は、憲法前文に宣言されています。
①の国民主権は、国の「主権」が国民にあることを意味するものです。主権とは、ⅰ、国家権力そのもの、ⅱ、対外的独立性、ⅲ、国政の最高決定権、の3つの意味がありますが、ここではⅲの意味で使われています。ⅰは、国の統治権を表すもので、日本が敗戦の際受け入れたポツダム宣言8項にいう「日本国の主権は、本州、北海道、九州及び四国並びに……諸諸島に局限せらるべし」という文言に現れています。ⅱは、憲法前文3項で「自国の主権を維持し」という場合に使われるもので、日本が国の一つとして諸外国から独立している、という意味になります。そしてⅲは、国の政治の在り方を最終的に決定する力又は権威という意味です。
この国民主権原理は、国民により政治決定がなされる政治体制である「民主主義」の根幹をなすものです。主権が国民にあるからこそ、国民が主体となって政治ができるわけです。
そして②の基本的人権の尊重は、先ほど解説したように、国民の権利を守ることを、国に対して約束させるものです。憲法11条が「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、犯すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」と述べている点にこの考え方が現れています。人権は、人として生まれた以上当然に持つものであり、いかなる法によっても犯されるものではない、ということを確認した規定だと言うことになります。
そして③は、改正問題が紛糾している憲法9条に現れており、戦争の放棄や交戦権の否定を謳うものです。これらの基本原理は、憲法の学習をする上でとても重要なものであり、憲法改正問題でも当然議論されているところです。
まとめ & スズトリYouTube版
今回は、憲法の成立と、その基本原理についてみていきました。次回は、権力分立や統治機構についてみていきたいと思います。YouTube版もあるのでどうぞ↓