皆さんは土地の取引をしたことがありますか。普段あまりすることはないと思いますが、実はその基本的なルールは民法に規定されています。今回は、土地の売買について学んでいきたいと思います。
こんにちは、ミノです。皆さんが普段暮らしているその家は、必ずどこかしらの土地の上に立っていると思います。でも、その土地の権利関係がどのようになっているのか考える機会は、ほとんどないと思います。
土地の権利に関する話は、法学にとって重要な話題です。どのような話がなされているのか、少し見ていきたいと思います。
目次
「不動産」と「動産」
土地や家は、法律上では「不動産」に分類されます。不動産とはその名の通り、動かすことができない財産のことです。不動産があれば「動産」もあるわけで、不動産以外のものは全て動産に分類されます。私たちがコンビニやスーパーで買うような日用品も動産にあたる訳です。
物権・所有権…全面的な支配を可能にする権利
ところで皆さんは「所有権」という言葉を使ったことがありますか。
所有権は、わかりやすく言えば「自分のもの」というわけですが、民法上では、「物に対する全面的な支配を可能にする権利」を指します。全面的に支配できるからこそ、物を自由に使ったり、売ったり捨てたりできるわけです。
この所有権は、民法上では「物権」の一つという扱いになります。物権とは、その名の通り「物」にまつわる「権利」を言います。物権は民法に定められたもののほか、その他の法律にもありますが、所有権以外の物権は、限られた用途でのみその物の利用が許されます。そのため、全面的な支配を可能にする所有権との区別が明確になるよう、制限物権という呼ばれ方をします。
物権変動…不動産と動産で分かれる。所有権の移動
物権は、他人に譲り渡すことができます。物権が他人に移っていくことを、物権変動といい、「不動産物権変動」と「動産物権変動」の二つに分かれます。
実は私たちが普段物を売り買いするとき、必ず所有権が移転する、物権変動が発生しています。でも普通はいちいち所有権の移転を確認したりはしません。なぜなら毎日あまりにも多くの売買が行われているため、逐一所有権の移転を確認していては時間の無駄だからです。
そのため、「売ります」「買います」の相互の意思が合致した時点で、所有権は移転することにしたわけです。これを規定したのが、民法176条です。
対抗要件制度…二重譲渡を解決する基準
所有権の移転自体は意思の合致だけで済みますが、現実にはそれだけでは足りません。例えばこのような事例が問題となります。Xさんが自分の持つ土地をAさんに売ります。しかし、もっとお金が欲しいXさんは、同じ土地をBさんにも売ってしまいます。Aさん、Bさんどちらの売買でも、意思が合致しているため、A・Bどちらも所有権は移っていることになります。果たして、この土地はどちらのものになるのでしょうか。
このような事例は、「二重譲渡」と呼ばれます。二重譲渡を解決する基準となるのが、対抗要件制度です。
対抗要件とは、「この物の所有権は、真に自分のもとにある」と言えるために必要な要素を言います。そして、「自分が所有権を持っている」と他人に言うことを「対抗する」と言います。また、対抗要件を獲得することを、「対抗要件を具備する」と言います。不動産の取引における対抗要件は、民法177条に規定されている登記です。
登記とは…土地の所有権を主張する際に必要
登記とは、ある土地の権利を、誰が、いつ獲得したかについて記録する書類です。
これがあることにより、所有権という目に見えないものをだれが持っているか、証明ができるという訳です。そのため、先ほどの二重譲渡の場合、先に登記に権利を記録した方が優先することになる訳です。すなわち、登記を持っていなかった方は、ちゃんとお金を払ったのに土地がもらえなくなってしまうことになります。所有権の移転は意思の合致のみで生じますが、その移転をだれかに対抗するには、登記が必要だという訳です。
動産の場合…不動産とは異なり、「引き渡し」で対抗する
動産の場合には、行われる取引の多さから、手続が必要な登記のような制度はできません。そのため、動産取引においては「引き渡し」が対抗要件となります。引き渡しとは、物を手渡すことを言います。現実に物が渡されていれば、「確かにその人が所有権をもっているんだな」と理解することができるという訳です。
まとめ & スズトリYouTube版
今回は、不動産取引をはじめとした、物権変動についてみてきました。所有権の移転そのものは意思のみで生じますが、それを他人に対抗するためには、対抗要件を具備する必要があるということがわかってもらえれば幸いです。皆さんも、自分の持っているものの所有権について考えてみてはいかがでしょうか。