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【5分対策#10】債務不履行|債務・債権・契約責任を解説【図解・法律解説】

今回の動画では、民法上の債権債務関係や契約責任に関する規定のうち、債務不履行に関する規定についてみていきます。

債務不履行

民法上では、ある人が特定の人に対して、一定の行為をしなければならない義務を負う場合、「債務」という表現を使います。

債務の逆が「債権」であり、特定の人に対して一定の行為をさせることができる権利を言います。

例えばAがBから「1年後に返す」という約束をして100万円を借りた場合、1年後にAはBに対し100万円を支払う債務を負い、BはAに対し100万円の支払いを請求できる債権を取得します。

そして、債務者が債務を「履行」し、それにより債権者が「満足を得る」ことで、晴れて債務は消滅し、債務者の義務はなくなるわけです。

債務の履行は「債務の本旨」(415条1項本文)に従って行われなければなりません。100万円の支払いをしなければならないのに、10万円しか支払わないのはどう考えても完全な履行がなされたとは言えないわけです。このように、債務の本旨に従った履行がなされないことを、「債務不履行」がある、と言います。
まずは、債務不履行の詳しい内容について、改正前の民法と比較しながら見ていきたいと思います。

債務不履行の類型

民法上、債務不履行は以下の3つの類型に分かれます。

①債務の履行期を過ぎる「履行遅滞」(412条)。②履行が不可能となる「履行不能」(412条の2)。③履行がなされたものの、中途半端な履行がなされる「不完全履行」、の3つです。

債務が生じる場合として最も多いのは契約を締結することですが、その際、その債務を履行する期限を定めておくことが普通です。

その期限までは債務者は支払いをする必要はなく、その期限を過ぎることで債権者は債務の履行を請求できるようになります。履行期を過ぎることで債務者は履行遅滞に陥り、それに伴う責任を負うことになる訳です。

②はそのまま履行ができなくなることを言います。

履行不能は、契約を締結した後に不能になる後発的不能と、契約締結段階でそもそも不能であった原始的不能に分かれます。

改正前の民法では原始的不能である場合そもそも契約自体が無効であり、債務は成立しないとされ、契約締結段階で当事者に過失があったとして損害賠償請求をすることで処理していました。

しかし改正により原始的不能の場合でも契約は成立するとされ、債務不履行の問題として処理されることになりました。

そして、③については特に明文はありませんが、債務の本旨に従った履行がなされていない以上、当然に債務不履行になるとされています。

不完全履行がなされても、その後にきちんと履行ができる場合、履行遅滞の場合と同様に扱い、その後の履行もできない場合、履行不能として扱うことになります。

債務不履行の効果

債務不履行に陥ると、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求することができます。(415条1項本文)

例としては、相手が売買の目的物である機械を引き渡さず、1か月作業が遅れたため、引き渡しがあったならば得られたであろう利益を損害として請求する場合です。

但し、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、損害の賠償を請求できません。

このことから、債務不履行による損害賠償請求が認められるための要件としては、ⅰ債務不履行類型のどれかが成立すること、ⅱ損害が発生したこと、ⅲⅰとⅱの間に因果関係があること、ⅳ債務者の帰責事由、の4つがあげられます。以下、それぞれの債務不履行類型の詳しい成立要件についてみていきます。

①履行遅滞となる要件としては、(a)履行期に履行が可能であったこと、(b)履行期に履行しなかったこと、(c)履行しなかったことにつき違法性があること、の3つです。

例えば、AがBに対する債務を履行しなかった場合に、Aに同時履行の抗弁権などの抗弁事由がある場合、違法性がなく、履行遅滞は生じないことになります。この同時履行の抗弁権については、後で解説します。

②履行不能の成立要件は、(a)履行が、原始的・後発的問わず社会通念上不可能であること、(b)その不能が違法であること。

そして③不完全履行の成立要件は、(a)不完全な履行がなされたこと、(b)不完全な履行がなされたことが違法であること、になります。

なお、履行不能に陥っていない限り、不履行があった債務自体は消滅していないため、改めてその債務の履行請求(追完請求)ができ、損害賠償の請求と同時にすることができます。

また、履行不能に陥っている場合には、履行に代わる賠償(填補賠償)の請求をすることもできます。

同時履行の抗弁権

同時履行の抗弁権は533条に規定されています。

例えば、AとBが車の売買契約を締結し、売り主のBが代金の支払いを請求してきたとします。しかし、Bが本当に車を引き渡すか疑っているAは、民法533条により、「Bが車を引き渡すまで、こちらは金を支払わない」と主張することができます。これを同時履行の抗弁と言います。抗弁とは、ある請求に対し、その請求を受けた者が、請求を妨げる事由を主張することを言います。先程の例だと、代金を支払えというBの請求に対し、Aは533条により支払わなくてもよい、という主張をするわけです。

この抗弁があることで、Aの不履行に違法性がないことになり、履行遅滞が成立しないわけです。

まとめ & スズトリYouTube版

今回は、債務不履行の類型について、また債務不履行による損害賠償の要件についてみてきました。YouTube版もあるのでどうぞ↓