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【5分対策#04】財産犯と不法領得の意思|使用窃盗|刑法をわかりやすく解説【図解】

今回の動画では、不法領得の意思についてみていきます。


財産犯

刑法の学習においては、財産犯についての学習が重要になってきます。刑法における財産犯は、どのように行われる犯罪であるかにより、図のように分類されます。

まずはこの表についてみていきましょう。まず財産犯は、個別財産に対する罪と、全体財産に対する罪の二つに分かれます。全体財産に対する罪は、247条の背任罪のみです。

背任罪は、自動車メーカーの経営者が起こした事件で有名になった罪ですが、会社などから事務の処理を任される者がその任務に背いた行為をして、会社に損害を与える罪を言います。

個別財産に対する罪は、「現金100万円」や「宝石類」など、具体的な「物」自体に対してする罪になりますが、全体財産に対する罪である背任罪はそうではない点で異なります。

個別財産に対する罪

個別財産に対する罪は、まず財産を奪うことを手段として財産侵害をする領得罪と、奪う以外の方法で財産侵害をする毀棄罪に分かれます。

毀棄罪の例は261条の器物損壊等罪です。そして領得罪も、直接領得行為を行う奪取罪・非奪取罪と、間接領得罪に分かれます。

間接領得罪の例は、256条の盗品譲り受け等罪です。誰かが財産犯を犯して手に入れた物をもらったりすることで、間接的に物の所有者の財産権を侵害するわけです。

非奪取罪は252条以下の横領の罪です。横領は、誰かから預かっている物に手を付ける犯罪であり、無理やり誰かから物を奪うことはないため、非奪取罪に分類されます。

奪取罪は、財産の所有者の意思に反して物を奪う盗取罪、所有者に誤った意思を生じさせ、所有者自ら財産の交付をさせる交付罪に分かれます。盗取罪は窃盗罪や強盗罪、交付罪は詐欺罪や恐喝罪からなります。

不法領得の意思

これらの財産犯が成立するための前提として必要となるのが不法領得の意思です。

不法領得の意思は、①権利者を排除して所有者としてふるまう意思(権利者排除意思)、そして②財産の経済的用法に従い利用・処分する意思(利用処分意思)の二つからなり、両方が備わっていないと財産犯は成立しないことになります。


これらの意思が必要とされるのは、判例によると、①:不可罰とされる使用窃盗との区別のため、②:毀棄罪との区別のため、となっています。

まず①についてです。


例えば、アパートに住むAさんが、近くのコンビニに行こうと部屋を出ると、アパートの前に見知らぬ自転車が鍵をかけずに止められているのを発見します。Aさんはすぐ返すつもりだから持ち主に無断でよいだろうと思い、自転車を使用してコンビニに行き、15分で元の位置に自転車をかえしました。このように、その物を使用してすぐ返すつもりで物を盗む行為を使用窃盗と言います。

このような行為について窃盗罪の成立を防ぐため、判例は①の意思を必要としたわけです。

先程の例では15分と短い間の使用に留まるため、所有者としてふるまう意思に欠けるとして窃盗罪は成立しないことになります。短い間であるため、所有者への財産侵害の程度がそこまで大きくないと考えられるためです。

しかし、これが例えば一日中自転車を乗り回した場合になると、その間所有者が自転車を使えなくなってしまうため、ふるまう意思が認められ、窃盗罪が成立することになります。

先程述べたように、判例は①の意思を必要としますが、学説においては①の意思を不要とする考え方も多くなっています。この場合でも、財産侵害の程度が大きくない使用窃盗行為については、刑法上の処罰に値しないものとして窃盗罪の成立を否定します。

利用処分意思

次に、②についてです。

例えば、Aさんが、日ごろから恨みを持っているBさんを困らせようと、職場でBさんの大事な書類を隠してしまうことを思いつき、その書類をBさんの机から持ち出した場合などです。この場合、Aさんはあくまでその書類の経済的な効用をなくしてしまうことが目的でもちだしたのであり、その物を使うために持ち出したのではありません。

そのため、判例では利用処分意思に欠けるとして窃盗罪の成立を否定するわけです。もっとも、自転車を盗んで分解し、部品を売却する場合など、ただ毀棄するだけでなく、一部でも利用処分する意思があれば、不法領得の意思は認められます。

まとめ & スズトリYouTube版

今回は、財産犯について、また不法領得の意思についてみてきました。YouTube版もあるのでどうぞ↓