今回は、債務不履行の効果の一つである契約の解除についてみていきます。
目次
契約自由の原則
民法では、大原則の1つとして、契約自由の原則があげられます。
これは、個人が社会生活において、その意思に基づき自由に契約を締結して、生活関係を処理することができるとする原則です。この原則により、当事者がその意思に基づいて同意している限り、どのような契約でも締結することができます。鉛筆一本を、100円で売買しようと、1万円で売買しようと、当事者の自由なわけです。
この原則に基づき、自由に契約を締結した以上、当事者はその契約に拘束され、債務を履行する責任を負い、途中で投げ出すことは許されないことになります。これを、契約の拘束力と言います。
しかし、相手が債務を履行しない場合に、絶対に契約を貫徹させる必要があるとすると、債権者側に過剰な負担を課す恐れがあります。そのため、債権者を契約の拘束力から解放するため、契約の解除をすることが認められるわけです。
契約の解除
契約の解除は、541条に規定されています。まず、当事者の一方が債務を履行しない場合、その相手方は、相当の期間を定めて、債務を履行するように催告します。そして、その期間内になお履行がない場合に、契約の解除ができることになります。
もっとも、542条1項により、催告をせずに直ちに契約の解除ができる場合があります。
①債務の全部の履行が不能であるとき。②債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。③債務の一部が履行不能、または債務の一部の履行を明確に拒絶した場合に、残りの部分だけでは契約の目的を達成できないとき。④契約の性質上又は当事者の意思により、特定の日時・期間でなければ契約の目的を達成できない場合に、債務者が履行せずにその時期を過ぎたとき。⑤その他債権者が催告をしても、契約の目的を達成するのに足りる履行がされる見込みがないのが明らかであるとき、の5つの場合です。
なお、債務不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除権は発生しません(541条但書)。例えば100万円を支払う場合に、1円足りない場合などです。また、債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものである場合は、解除権が発生していたとしても解除をすることはできません。
541条の解除権は、法定解除権と呼ばれていて、どのような契約をした場合にも適用される規定です。法定解除権以外にも、当事者が契約段階で任意に解除権を設定することもでき、法定解除権に対して約定解除権と言います。
解除の効果
解除をすると、各当事者は相手方を原状に復させる義務を負います(545条1項)。これを、原状回復義務と言います。原状回復の例としては、受け取った金や物を返すことです。
また、未だ支払っていない金や、まだ明け渡していない物については引き渡す必要がなくなります。契約がなかったことになるため、当然の帰結です。
これらの義務には制限があり、第三者の権利を害することはできないとされています(545条1項但書)。例えば、AとBがAの持つ土地を売り渡す契約を締結し、BがCにその土地を転売した後、Bが金を支払わないことを理由に契約を解除する場合です。このような場合には、Aは契約の解除ができません。なお判例上、第三者が保護されるには、対抗要件としての登記が必要となります。
解除の効果について、解除から原状回復義務が生じるまでの法律構成が明文上明らかとなっていないため、これをどのように解するか問題となります。
直接効果説
判例・通説は、直接効果説という立場に立ちます。
これは、解除により直接に契約がなかったことになり、契約の効果が遡及的に消滅する、と説明する見解です。契約がなかったことになるため、未だ履行をしていない分については、当然に履行する必要がなくなります。また、既に履行した分については、契約がなかったことになる結果、何も理由がないのに履行をしたことになり、返還義務が生まれるわけです。そして、第三者保護の規定については、96条の詐欺取消の場合と同様、解除による遡及効を制限する趣旨だとします。
これに対し間接効果説は、契約が直接消滅するとは説明せず、解除によりまず原状回復義務が発生し、それを履行することにより間接的に契約が消滅するに過ぎないとする見解です。これによるとみ履行分については、同時履行の抗弁権により履行を拒むことができ、き履行分については原状回復義務により返還させることになります。そして、原状回復義務が当事者間に発生することから、第三者保護規定は当然のことを注意的に規定したものだと説明します。
まとめ & スズトリYouTube版
今回は契約の解除についてみてきました。YouTube版もあるのでどうぞ↓