Youtubeチャンネルはこちら!

【法律図解】時短命令は憲法違反か?争点は?特措法など解説【わかりやすく】

緊急事態宣言が3月21日に解除され、首都圏の1都3県でも経済活動の緩和が始まりました。しかしそんな中、都が新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて出した時短営業の命令が、憲法に違反するという内容の訴訟が提起されました。この訴訟にどのような意味があるのでしょう。今回は、特別措置法の内容や提起された訴訟の問題点についてみていきたいと思います。


特別措置法の改正

2021年2月13日、改正された新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)が施行されました。それまでは緊急事態宣言下にあっても、各都道府県知事は、特措法45条2項に基づき施設の使用の制限・停止の「要請」ができるのみでした。しかし新たに3項が追加され、「正当な理由」なく2項による要請に応じないときは、施設の使用の制限・停止を図る措置を「命ずることができる」とされました。さらに79条により、45条3項による命令に違反した場合、30万円の過料を科すことができるとされました。

この改正特措法に基づき、東京都は3月18日に新橋の一部の飲食店に対し、時短営業をするよう命令を出したわけです。

訴訟の内容

このような命令を出された飲食店側が、3月22日に、都を相手取った損害賠償請求訴訟を提起しました。

その理由としては、「正当な理由」があるのに3項による命令を出した、という「違法な」行為により損害を被ったこと。そして、仮に「正当な理由」がなかったとしても、今回出された命令が、憲法22条の保障する営業の自由、21条の表現の自由、そして14条の法の下の平等に反し、違憲であることを理由としたものです。これらの理由について詳しく見ていきたいと思います。

正当な理由について

ここでは、今回の訴訟の原告となる飲食店を、Xとします。まず、特措法45条2項による「要請」は、法的拘束力を伴わない行政指導であり、要請を受けた側は、その要請に応じるか否かを任意に決定できます。任意であるため、必ずしも従う必要はないというのがXの主張です。

また、要請に応じた飲食店に対して給付される協力金が、一律1日6万円と、大規模な事業を展開するXにとっては極少額であったことも、要請に応じない理由の一つとしていました。しかし、特措法45条2項によると、要請をする趣旨は、感染症等の蔓延の防止、国民の生命・健康の保護、国民生活・国民経済の混乱の回避にあるとされています。

そうであるとすれば、「正当な理由」があるか否かの判断は、厳格になされるべきであると言えます。

例え協力金が6万円と少額であったとしても、どの飲食店も同じ状況であり、特別Xだけに対して不利益が課されているわけではありません。そのためそれを「正当な理由」として主張することは難しいのではないかと思われます。

憲法違反について

Xは、2度目の緊急事態宣言が出された2021年の1月に、ホームページで、新型コロナウイルス感染症に対するXの考え方や、緊急事態宣言の必要性に対する考え方を公開しました。それだけでなく、時短要請に従わないことについての弁明書を都に対して提出し、同様にホームページにも掲載しました。

しかし東京都は、これらの表現が、客側に来店を促して人の流れを増大させるものであり、他の飲食店舗にも要請に従わないことを誘導するものであるとして、3項による命令をだしました。この点につき、都の命令により表現の自由が害されたと主張するわけです。

そして、都の時短命令は、32店舗を対象に出され、そのうちの26店舗がXの経営する店舗であったと言います。しかし、都の要請に従わなかったのは約2000店舗に及びます。そのため、2000店舗全てに命令を出さずに、Xを「集中狙い」するような意図で命令を出したとして、法の下の平等に違反すると主張しているわけです。

訴訟の意義について

先述のような憲法違反の主張については、X側の担当弁護士も述べているように非常に厳しい主張であると言えます。一般論として、国家賠償請求は認められにくいとされているためです。そのため、X側の勝訴は現実としてかなり厳しいと見ていいと思います。

もっとも、今回の訴訟でXが請求した額は、104円と極少額になっています。これについてX側は、今回の訴訟の目的は利益にあるのではなく、あくまで問題提起をすることにあると述べています。X側の主張がどのように取り上げられるかはわかりませんが、都の強行的な時短命令の是非について、疑問を投げかける事件であることは確かです。

まとめ & スズトリYouTube版

YouTube版もあるのでどうぞ↓